レインリリー
堅司さんが、淡々と話し始める。


「この間、急に引っ越しの手伝いだって出かけたのは、本当はネットワークビジネスの説明を受けに行ってたんだ・・・」


やっぱり引っ越しって言うのは
嘘だったんだ。。。


「斉藤さんって人?」


「そう。あの時《急に時間が空いたから、どうだ?》ってメールが入ったらしい。で、誰か連れて来いって言われたみたいで俺も無理矢理連れて行かれて」


「だから、あんな変な態度だったんだ」


「うん。それで、俺も一緒に説明受けたんだけど、やたら話し長いし俺バカだから全然、理解出来なくて。
でも《そんなうまい話しヤバイだろ!!》って事ぐらいは分かったから、崇人連れて帰ろうとしたら上の人?らしいオバさんが来ちゃって帰れなくて。何かさ、斉藤さんとオバさんの必死な感じが俺には《やっぱ、こんなんで簡単に儲かるわけないんだな》って惨めにすら見えたんだけど…崇人は斎藤さんに恩があるとか、いい人だからとか言って迷ってたんだよ」


「・・・バカだ」


「な。本当バカだよ。
その日は考えて返事するって言ってなんとか逃げて、帰りの車で散々《止めとけ》って忠告したのに。あいつ、その金、多分、入会金とか初期費用に使ったんだと思う」


「・・・・・・」





言葉が出なかった。
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