レインリリー
「深沢さんって
養育費いくら、もらってるの?」


音も無く近付いてきた課長に急にそんな質問をされ、給湯室でお客さんに出したコーヒーカップを洗っていた私は思わず手を滑らせてしまった。



「あの、最低限の金額ですけど。。。何か?」


「実家に帰ったんでしょ?じゃ、無理して働かなくていいんじゃないの?」


「いえ。そんな訳には…」


「へえ~。うちの課の奴に手出してデキ婚とか止めてよ。採用したばっかの子が退職すると監督不行届みたいに思われて、こっちが迷惑だから」


「・・・はい。分かりました。
すいません、あの、この割れたカップ
どうすればいいですか?」


「えっ?あれっ割っちゃったの?
気を付けてよ。琴子ちゃ~ん、ちょっと深沢さん見てあげて」


「はい課長。ん?香奈どしたの?」


「これ、割っちゃったんだって。じゃ、後はよろしく頼んだよ」


苛々と肩を怒らせた課長が席に戻ったのを確認して、私は、フーッと大きく息を吐いた。。。
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