レインリリー
「お待たせ~」
「おう」

車に乗り込むと
右手はハンドルを握ったままの崇人が、
助手席の私に左手を差し出してきた。

これは、
崇人が機嫌のイイ時の癖みたいなもので、私はその手をソッと握る。


「手、冷たいね。気持ちいい」

「エアコンの風、当たってたから」


言いながら、私を見て微笑む顔が
あまり感情を表に出さない崇人にしては、緩んでる。


「何かいい事あったの?」


尋ねる私の手を
1度ギュッと握ってからほどき、



ゴソゴソとパンツのポケットから
取り出した物を

「これ」

と、フロントガラスにかざした。
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