♡ワケあり彼女と極秘恋愛♥
その黄色い声につられるようにして、
俺は撮影を行っている2人を見てしまった。
───…あぁ、もう無理。限界。
その言葉しか、出てこなかった。
撮影はもう終盤。
三村 魁星が…、水野をぎゅっと抱きしめて。
水野も、その細い腕でヤツの背中に腕を回す。
──何なの、マジで。
俺はその場をスッと立ち上がると、
「ごめん、ちょっとトイレ行ってくる。」
と、伊集院に背を向けて放った。
「ふふっ……よく耐えた方なんじゃないの?」
伊集院が笑いながら言った、その言葉を聞き、
この場から逃げ去るように、歩みを始める。
…最悪 最悪 最悪。
見るんじゃなかった。
……あんな、シーンなんて。
…わかってる。
撮影だからって事くらい。
お互い、モデルなんだから仕方ないって。
俺が、こんなに怒る立場じゃないんだって。
──でも………。
……でも、俺だって…、出来るなら今すぐ抱きしめたい。
三村 魁星を引き剥がして、俺が………。
「……くそっ」
トイレの前まで来て、俺は足を止めた。
───本当は焦っているんだ。
水野はあんな男が好きなんじゃないか、って。
…水野と1番仲いい男子は俺だって思ってたけど、
それはただの自惚れだったりして、って。
───「あはは」
その時、浮かんだのは
とても幸せそうな水野の顔……。
そんな顔で、笑うな。
"「実はデキてたりして?!」”
───本当に、実はデキたんじゃね?
さっき、休憩しに行った時。
あんなに暗い顔してたのに、2人でどっかに行ったあと、
すっげぇ笑顔だったし。
……それって、三村 魁星と何かあったんだよな。