♡ワケあり彼女と極秘恋愛♥
──その日は、何をしてたか全然 思い出せなかった。
授業中は勇也の周りに女子なんていないし、
席が隣だったから、喋れたけど…。
休み時間になると、もう、別の世界。
廊下には、勇也を見に来る女子で溢れ帰って、
私が勇也と話せる隙なんて、一瞬もないんだ。
それを見ているうちに、胸がきゅーって苦しくなって。
こんなだったら、勇也を見ない方がいいや、って思って
逃げるように教室から出ていく。
……でも、やっぱり勇也の事が気になって。
そんなこんなの繰り返し。
「勇也……っ」
終礼が終わって、思い切って声をかけた。
……いや、かけようとした。
けどね、出来なかったんだ。
──「あのっ、ちょっと話いいかなぁ……?」
そう、可愛い女の子が頬を真っ赤に染めながら、
勇也に声をかけていたから。
──話って、告白だよね?
そんなこと、私でもわかる。
私は、誰にも見えないようにギュッと手を握った。
……ダメだ。
こんな時に「一緒に帰ろ」なんて、言えるわけない。
……私が、あの女の子だったら、呼び出すだけでも、
どれだけ勇気がいるか、わかる気がするから。
「っ」
私は、急いで自分の鞄を持って、勇気の横をスッと通り過ぎた。
有紗は担任に呼ばれているって言ってたし、
勇也は……、あの女の子と一緒だから、今日は1人。
…寂しいなぁ。
夏休み前は、3人で話しながら帰ってたのに、ね。
下足で靴を履き替えて、校門を出たとき。
──「水野さんっ!」
「え?」
聞き覚えのない声の方を振り向くと、
見たことのない男子が立っていた。
?誰だろう…?
その人は少し耳を赤くしながら私を見る。
「あ、の!」
「?はい」
「好き、ですっ」
「えっ?」
い、いいい今なんと?
「水野さんが、好きです!付き合って下さい!」
えぇーっ?!
嘘?!
「あのっ、その、」
告白ですか?!
珍しい。普段はされないのに……。
何で、こんな日に───
……私なんかを好きになってくれたのはすごい嬉しい。
でもね、───
「っ、ごめん、なさい……っ」
私の脳裏をかすめたのは、勇也の笑顔。
──私、勇也が好きなの………。