♡ワケあり彼女と極秘恋愛♥
ようやく来たと思ったのに、走り去ってしまった水野。
「……は?」
「水野さん…泣いてなかった…?」
神崎にもそんな水野の顔が見えたのか、
とても慌てたような顔をしている。
…うん。そう。
さっきから、俺もその事が気になって仕方ない。
「あ……、もしかして…」
と、神埼は何か思いついたかのように言った。
「何?」
何か、わかったのか…?
俺がそう言うと、神埼は俺をチラッと見てから、言いづらそうに口を開いた。
「……勘違い…しちゃったのかも…。」
「勘違い?」
「そう。…私たちが、付き合ってる…とか」
「え?」
何でそんなこと…。
「それで何で水野が泣くわけ?」
「それは多分……、いや。私からは言えない」
「何それ?」
神埼は知ってて、俺には知らないことがあるの?
「とにかく、広瀬くんは行かないとっ…!」
その神崎の一言でハッとなる。
そうだ。
今は考えるよりも行動しないと。
水野 泣いて行っちゃったし。
「ごめん…!俺 行くわ」
自分の鞄と、水野が置いたままの鞄を持って、追いかけるように廊下へ出る。
「──広瀬くんっ!」
「ん?」
教室を出る寸前で、神埼に呼ばれ俺は振り返る。
すると、神埼は何かを言いそうになったけど、その言葉を飲み込んで。
「……頑張ってね!!!」
そう、俺にニコッと笑った。
俺はその笑顔に一瞬戸惑う。
神埼──……。
…だけど、これは神埼の精一杯の気遣いなんだろう。
俺は神崎の気持ちを無駄にはしたくない。
「…ありがとう」
俺は、そう言って教室をあとにした。
───……
「好き………っ」
神埼が俺のために涙を流していたなんて、
この先、知ることはないだろう。