♡ワケあり彼女と極秘恋愛♥
始まりのkiss
「──っ、はぁ…っ」
学校を出てから、10分近く。
私はずっと走っていて、
そろそろ体力が限界に近づき、足を止めゆっくりと歩き出す。
…体力、落ちたなぁ。
今だって、すごい息切れてるし。
まぁ、こんなに走ったなら、無理はないのかもしれない。
──っていうか、どうしよう。
ただあの場から立ち去りたくて、何にも考えずに出てきちゃった…。
家から反対の方向に走ってきちゃったし……。
………勇也も、変に思ったよね。
そう考えていたら、ふいにどうようもない悲しみが一気に襲ってきて。
「……、勇也…………」
そう、ぽつりと呟いて、地面を見下げた。
───やっぱり、勇也は神崎さんと付き合ってたんだ。
朝、話があるって勇也も言ってたけど、この話だよね…。
そして、あの時の勇也の顔を思い出す。
“好きだよ”
そう言いながら、 とても愛おしそうな表情をしていた勇也。
…好きな子の前では、あんな顔するんだね。
「───…ははっ、失恋…だ…」
そう言って、手で顔を覆った。
……私、まだ告白もしてないのに。
想いも、伝えてないのに。
……失恋って、こんなに苦しかったんだね。
全てが崩れ落ちていく、そんな感覚。
お願いだから、嘘であってほしいとまだ願っている自分。
…だって、こんなの悲しすぎるよ。
やっと……、告白しようって決めたのに。
───……もう、諦めるしかないのかな?
そんな考えが頭をよぎった時だった。
「~~…水野っ!!」
びくっ────
その声に思わず心臓が飛び跳ねる。
……いや、まさかね。
だって、来るわけないもん。
彼女置いて、私の所になんか……。
私は恐る恐る後ろを振り向き、その人物を見た瞬間、
考える暇もなく、走り出していた。
「…っ、何で…!!」
何で────
…勇也が。
「~~…!!!」
とりあえず、今の私にわかること。
…勇也から逃げ切らないといけない。
勇也に何かをいわれたわけでもない。
ただ………、そんな気がする。
だけど、私は女で、勇也は男。
こんなの……
パシっ────
「やっと…捕まえた」
逃げられるはずもなく。