♡ワケあり彼女と極秘恋愛♥
怖すぎて耐えきれなくなったのか、俺の左腕にギュッと抱きついて
首を横に振る 由莉。
俺に助けを求めているのか、顔を埋めてきた。
…だけど、それとは別に、俺には深刻な問題が発生。
──あのー…、由莉さん?
ちょっと…………、あれが当たってます。
うん。やばいね、これ。
ごめんなさい。俺も健全な男子高校生なんです。
…もしかして、これは由莉の計算か?
なんて。
純粋な由莉が、そんなことを考えるわけがない。
「血が……血がぁぁぁ゛っ」
「やめてぇぇぇええ!!!」
──お化けのうなる声と、由莉の叫び声と、
そして俺の左腕に当たる感触と。
もう、何からどう片付けたらいいのかわからない。
つーか、お化け役の人、完全に楽しんでるし。
お化けが迫ってくると、由莉はギュッとつかまって、
その度に俺の脳内に警報が鳴り響く。
……これは、理性が持つかわからない。
「ゆ、由莉?歩きにくいからさ、1回離れてくれない?」
「やだっ!!!」
由莉は絶対に離れたくないらしく、俺の腕にその細い2本の腕を絡ませる。
………嘘だろ、おい。
あと出口まで半分もあるのに…、俺は耐えれるのか。
でも、こうなった限り、俺に残された選択肢は
とにかく歩くということだけ。
「…ちゃんと俺についてきて」
俺はそう低く呟いて、足を進めた。
由莉はこくこくと首を縦に振る。
「ぁぁぁぁ゛……」
「うぅ……っ」
…全く、何だよこれ。
──下心なんてこれっぽっちもなかった。
ただ、由莉が怖がってるところ見たいって思っただけ。
…なのに今は、自分と闘ってるなんて。
きっと、由莉は隣で俺がこんなことを考えているなんて思ってもいないだろう。
──俺は、そう一人で悶々と考えながら出口まで急いだ。
外の光が見えてきたとき、ふいに由莉の力が弱まった気がした。
あぁ、やっと拷問から開放される…。
「由莉、外 出たよ」
「うっ……怖かったぁ……」
「ごめんごめん」
そう目に涙を浮かべている由莉の頭を優しく撫でた。
そして、由莉を落ち着かせるために、近くにあったベンチに腰掛けた。
「はぁ………」
俺も一気に脱力感に襲われてため息が出た。
──そして、由莉とお化け屋敷に行くのは、
この日が最初で最後だった。