♡ワケあり彼女と極秘恋愛♥
「ありましたーっっっ‼︎‼︎」
「「「え?!」」」
みんなが一斉に声のした方を向く。
その男の人は、手に何かキラキラしたものを持って、息を切らして走ってくる。
「はぁっ…はあっ…、隣のスタジオの人が…間違えて持って行ってたみたいで…っ」
そうだったんだ………。
この人は、隣のスタジオまで見に行っていたんだ。
「そうだったか…。よく見つけてくれた。ありがとう」
「はい!」
そう監督に言われると、男の人は嬉しそうに笑って。
…多分、この人は監督のことを尊敬しているんだろうな、って思った。
…いいな。
私も、誰かからこうやって尊敬されるようなモデルになりたい。
「それじゃー、撮影再開しまーす」
「「はーい」」
周りの人を見ると、みんな慌てている様子。
多分、時間が気になるんだろう。
「momo、頑張りなさい。」
「はい。」
私次第で、周りの人に迷惑をかけることになる。
撮影が長引いてしまうんだ。
だから…
──…本気で、いく。
撮影を早く終わらすためにも、
誰かから、尊敬されるためにも。
「momoちゃん始めるよ」
その言葉がスイッチのように、気持ちを入れ替えて。
──カシャッカシャッ
私は、シャッター音が鳴るたび、
次々と表情やポーズを変える。
「……っ」
「すごい、ですね…」
「今日のmomo、いつもと違う…」
周りが圧巻されているのも、気付かないくらい、集中して───。
「一旦チェックしまーす」
そう言って、撮った写真のチェックに取り掛かる。
…ドキドキ。
どうだろう…。
私はその様子をそわそわしながら見てるだけ。
「うん。────…完璧だ。」
「っ!」
ってことは……?
「今日の撮影は…終わりだ。」
「っしゃーー!!」
「すぐ終わったね!!」
手を取り合って喜ぶスタッフの人たち。
「それぞれ予定があるんだろう。急いで片付けろー」
「はい!」
そんな周りの人たちが喜ぶ様子を見て、私も笑みがこぼれる。
「お疲れ様。」
「西園寺さん……」
「最後の撮影、今までで一番良かったわ」
感動しちゃった、と微笑む西園寺さん。
「ありがとうございます」
何だか照れ臭かったけど、私も笑った。
「ほら、momoも急ぎなさい。……広瀬くんとの待ち合わせがあるんじゃないの?」
「あっ」
西園寺さんのその言葉で、ふと我に返った。
本当だ…、早く終わらすことだけ考えて、このあとのことを忘れていた。
私は急いで時刻を確認する。
6時…35分…。
「西園寺さん、私 帰ります!!さようなら!!」
「わかったわ。今日はありがとう」
──…私は西園寺さんに見送られながら急いで走った。
服を着替えて、パッと鏡で自分の姿を確認して。
…良かった。メイクも、髪型も、崩れてない…。
それだけを確認すると、バッグを持って勢いよく部屋を飛び出す。
途中、何度もこのスタジオのスタッフさんに会って「お疲れー」と言われたけど、
私は「お疲れ様です!」とだけ言ってずっと走り続けた。
「はぁっ…」
──早く。もっと早く。
勇也、もう帰っちゃってるかな…。
すでに35分も過ぎてるんだもんね…。
でも、電話してる時間なんてない。
それより、早く勇也に会いたいから。
…勇也がもし帰っちゃっていたら、
私が勇也の家まで行くもん。
そんなことを考えながら、
階段を降りようと角を曲がった瞬間。
──ドンッ
「きゃ…っ」
何かにぶつかった。