♡ワケあり彼女と極秘恋愛♥
サァーっと頭から血の気が引いていく。
「〜でも社長…っ」
「momo!!」
まだ何か社長に言おうとした私を止めたのは、西園寺さん。
その声の大きさのあまり、肩をびくっと揺らす。
そして、西園寺さんは小さく息をはいてから
口を開いた。
「…momo、一度、落ち着きなさい。」
「ぇ……」
「社長、今日は……、momoを帰らせます。本当に申し訳ありません」
西園寺さんはそれだけ言うと、社長に頭を下げて、
私の腕を引きながら社長室をあとにした。
「今日は…私の車で家まで送るわ」と、西園寺さんに言われて私は車に乗り込む。
「……」
「……」
車に乗ってから、2人とも口を開かない。
…あぁ、この空気。
決して雨が降っているわけではないのに、
何かを言うのも躊躇ってしまいそうでとても暗い。
こんなの、重すぎて、私には耐えられそうにない。
「──…ごめんなさい、momo」
そんな時、ふいに西園寺さんが口を開いた。
「…本当は、少し前から知っていたの。あなたに、マスコミが張り付いているって…。
だけど、いつも幸せそうに広瀬くんの話をしているmomoの顔を見てたら、何も言えなかった。
いや、言いたくなかったの。」
前の席にある鏡から、運転席に座っている西園寺さんの表情が見えて、
ぐさっと何かが胸にささる。
「いえ…、私の意識が低かったんです。ちゃんと考えていれば、こうなることくらいわかってたはずだった…。」
──どうして。
どうして、あの頃の私はあんなに無邪気でいられたのか。
私も、ちゃんとした一人のモデルなんだ。
私が問題を起こせば、たくさんの人に迷惑がかかってしまうことくらい、考えられたのに…。
今すぐにでも昔の私に会いに行って、教えてあげたい。
「momoばかり責められることではないわ。
私だって、広瀬くんと上手くいくように口出ししたもの。」
…色んな人が、私のせいで巻き込まれる。
西園寺さんは、どんな時でもいつも私を応援してくれて。
勇也とのこともそうだけど、仕事のことでも数えられないくらいお世話になっている。
…多分、私以上に私の仕事のことを考えてくれていると思う。
本当は、西園寺さんは何も悪くない。
悪いのは、私。
周りをよく見ていなかった、私。
「…私がこんなことを言える立場ではないけど、
もう一度、広瀬くんとのこと、よく考え直してほしい。」
「──…」
西園寺さんが辛そうに顔を歪めてそう言う姿を見て、私は何も言えなかった。
はい、なんて簡単に言えない。
…だけど、言い返すこともできない。