♡ワケあり彼女と極秘恋愛♥
──翌朝。
目覚ましが鳴って、私は重い瞼を開いた。
えーっと…、どうして私 制服のままなんだろう。
ボーーっとした頭を必死に回転させ、昨日のことを思い出そうとする。
「………あぁ。」
そっか、思い出した。
そして、私はケータイの電源を入れ、確認する。
…だけど、勇也からは、着信はおろかメールもきてなくて。
……まぁ、それもそうか。
なんて考えながらふらふらと浴室に向かった。
シャワーを浴びている時も、頭の中は空っぽで。
知らないうちに浴室を出て、髪を乾かし、服を着替えて、ご飯を食べていた。
昨日が金曜日だったから、今日は土曜日か。
「ちょうど良かった」
私はポツリと呟きながら、西園寺さんに電話をかける。
「…もしもし、momoです。…今日 社長のところに行きますと、お伝えください。
…はい、……はい。失礼します」
私はそれだけ言うとかばんを持って、外に出た。
「えっ、あれってmomoじゃない?!」
「嘘っ!本物?!」
私が街を歩いているとそんな声が聞こえた。
…あぁ、そういえば何も考えずに出てきちゃった。
そんなことを考えているうちに、
だんだん人は増えていって。
私の周りでシャッター音が鳴り響く。
休日だしなぁ…。
せめて、帽子だけでも被ってこれば…──
……いや、待って。
どうして、周りから隠れる必要があるの…?
私と勇也は…、別れたんだし。
写真を撮られても、何も困ることはないじゃん。
そう思った途端、なんだかどうでもいいように思えてきて。
「あ、あのっ!!私、momoさんの大ファンなんです!いつも雑誌 買って応援していますっ!
それで…、あの、サインもらえますか…?」
色紙をぎゅっと握りしめて、懇願するような眼差しで見つめてくる女の子。
そんな女の子に、
「…ごめんなさい」
──“今はそんな気分じゃないんで。”
そう言いかけた言葉をぐっと呑み込む。
「行かなくちゃいけない所があって」
私は困ったような笑顔でそう言った。
すると、その女の子は肩をすぼめて「そうですか…」と呟いた。
…その子の姿を見てずきっと胸が痛くなる。
…私は、人を悲しませることしかできないの…?
「──でも、」
私はその子の手を、両手でぎゅっと包み込み、微笑んだ。
「応援してくれて本当に嬉しい。…私も頑張るから、あなたも頑張ってね」
私がそう言うと、女の子は目を丸くして、「はいっ!」と眩しいくらいの笑顔でそう言った。
「……じゃあね」
次々と押し寄せてくる人を横目に、
私は走り出した。