♡ワケあり彼女と極秘恋愛♥
「…あのさ、」
榎本くんは私をチラッと見てそう言った。
「ん?」
どうしたの?と、私は首を傾げる。
そして何かを言うのを躊躇うように、私たちの間に沈黙が流れた。
榎本くんは、はぁーっと一息つくと私の目を真っ直ぐに見て。
「──…俺、水野のことが好きなんだけど……、
俺と付き合って…?」
彼の口から、そんな言葉が放たれた。
「え……?」
…もちろん、私はそんな気の抜けた返事しか出てこない。
──確かに勇也と別れてから、こういうことは増えていた。
…だけど、まさか榎本くんに告白されるなんて、思ってもいなかった。
呆然とする私に、榎本くんは一歩ずつ近寄って。
「…あいつとは違う。俺なら、絶対 幸せにする。」
追い打ちをかけるように、そう言った。
彼が言う“あいつ”とは、誰のことかなんて聞かなくてもわかる。
「……ごめん、なさい」
私は榎本くんから目を逸らすと、俯いた。
…私に、もう恋愛するのは出来ないんだ。
──…誰かを想って心が温かくなるのも、
誰かを想って胸が締め付けられそうになるのも、
もうすることはないんだ。
勇也が私のために決心してくれて、
私は仕事を選んで、
そして……、
──勇也は、他の子と幸せになって。
そうなることが、私たちが選んだ道。
もう、勇也だって好きな子ができているに違いない。
「そっ、か…。」
榎本くんは、暗い顔をしている私を見てそう呟いた。
「……ごめんね」
「いや、謝らなくていいから!
……けど、最後に一個だけ、お願いあるんだけど、いい?」
「うん!」
私は罪悪感からそう返事した。
──すると、榎本くんの表情が一瞬で変わったような気がして。
「…ねぇ。
キス、さしてよ」