♡ワケあり彼女と極秘恋愛♥
「……っ!!」
──嘘でしょ…?
そう思ったときにはもう遅かった。
私の両手首は、頭の上で榎本くんの片手によって押さえつけられ、
どさっとカバンが落ちた音が聞こえた。
ひんやりと背中に感じる壁。
下校時刻に近いせいか、廊下には誰もいない。
……もう、完全に逃げられない。
「え…、榎本くん…!」
私は、嘘だと思いたくて、彼の名前を呼んだ。
「なーに?」
そう言った時の榎本くんの表情は、
今まで私が見てきたものとは全くの別物で。
ニヤッと少しだけ上がっている口角に、私を見る、冷たく、だけどどこか楽しそうな目。
──怖い。
この時、背筋にぞわっと寒気が走り、私の中を恐怖という感情が占める。
「な、何でこんなこと…っ」
そう言っている間にも、榎本くんの顔はだんだんと近づいてきて。
「…そんなの、好きだからに決まってるじゃん?」
ちゅ、とリップ音を立てて、私のおでこに柔らかいものが当たった。
「い、や……っ!」
私はバッと顔を背けた。
「ははっ…!そんなに嫌がらないでよ〜…」
何がおかしいのか、榎本くんは乾いたような笑い声でそう言った。
私は押さえつけられている両手を必死に解こうと抵抗した。
だけど、そんな私の努力も虚しく、
逆にぐっと力を入れられた。
……もうやだ。怖い。
前まで、近寄りやすいと思っていた榎本くんに、
とてつもなく嫌悪感を抱く。
すると榎本くんは、私の耳元に顔を近づけた。