♡ワケあり彼女と極秘恋愛♥
榎本くんの手首を掴む勇也の顔は、今まで見たことがないくらい、冷たい表情で。
その表情に少しびくっと肩を揺らす。
──でも、どうして?
どうして、勇也がここにいるの?
…今日は他の子に遊ぼうって誘われてたじゃん。
それを、断ったの?
…いや、もしかしたら通りかかっただけなのかもしれない。
どうして勇也が来てくれたのか、わからなくて頭の中がぐちゃぐちゃになる。
「何してんだって聞いてんの。質問に答えろよ」
今にも殴りかかりそうな勢いで、勇也はそう言い放った。
勇也は榎本くんを掴む腕にグッと力を入れる。
それに榎本くんは一瞬だけ顔を歪めた。
だけど、また勇也を鼻で笑う。
「別に、広瀬には関係なくね?
………別れたんだろ、水野と」
「っ、」
──そう言われた瞬間。
さっきまで張り詰めていた空気が、とても重々しいものに変わる。
私の心臓も、どくん、と嫌な音を立て出した。
慌てて勇也に目をやると、
こめかみがぴくっと動いて、手に入れていた力が弱まったように見えた。
そんな勇也に気付いたのか、榎本くんは挑発したような声で続けた。
「ふっ……、なのに何でそんなムキになってんの?赤の他人なのにそんなに水野をかばうんだ?」
「や、やめ…」
──それ以上言わないで。
聞きたくない。自分でもわかってるんだから。
自分の耳を覆いたい衝動に激しく駆られる。
勇也はただ榎本くんを睨んでいるだけ。
「なぁ、広瀬?なんとか言えよ?」
「……っせ、」
「やっぱさ、広瀬ってまだ水野に未練あるんじゃ…」
「うるせぇって言ってんだよ!!!!!」