♡ワケあり彼女と極秘恋愛♥
榎本くんの姿が見えなくなって、
私と勇也だけになった時。
「ふ……っ」
何だか、ピンと張っていた糸が切れたみたいに力が抜けて、
私はヘナヘナとしゃがみこんでしまった。
…こ、怖かったぁ…。
榎本くんがあんな人だったなんて知らなかった。
いつも彼は私に笑顔で話しかけてくれて。
「…っ」
勇也を挑発するような表情や言葉、
それと私にキスをしようとしてきた時のことを思い出して、
また恐怖が襲ってきた。
今まで榎本くんは猫をかぶっていたってことなの…?
「…なあ。何されたの、あいつに。」
そんなことを考えていると突然。
「……教えて」
勇也もしゃがんできて、私と同じ目線になるように膝をついた。
──どくん。
勇也と目が合った瞬間、静かに動き出してしまった心臓。
「別に何も…」
私はそれをはぐらかすように目を逸らした。
だけど、
「嘘つかないで」
「……え?」
そう言って……、勇也は私の頬にそっと手を伸ばした。
そんな思いもしない勇也の行動に私の頭はついていけない。
眉を寄せてまっすぐ私の目を見る勇也は真剣で。
嘘をついても、すぐに見抜かれるような気がした。
「…っ、おでこに………、キス、された…」
「…へぇ。他は何もされてない?」
「うん…っ」
それを聞くと、勇也は「そう…。」と呟いて。
私は勇也を見つめる。
──ドキンドキン…
もう忘れてしまおう。
そう思っていたけれど、心臓はやっぱり正直で。
あの頃のことを思い出して、私の胸は鳴り続ける。
──…ダメだ、もう別れたんだから。
そう自分に言い聞かせるたびに胸がぎゅっと締め付けられるんだ。