♡ワケあり彼女と極秘恋愛♥
……ねぇ、勇也。
今、何を考えてるの?
何を思って、
「おでこ…か」
──そんな辛そうな瞳で、私を見るの…?
「……、」
声を出そうとしても、喉が張り付いて喋れない。
別れてから、こうやって向かい合ったのは初めてかもしれない。
目が合ったのだって、喋ったのだって、
別れたあとは1回もなかった。
──私たちが決めたんだ。
だったら、そんな思いも引きずってちゃ意味がない。
そう、ずっと心の中で言っていた。
それに、勇也だってもう他の子を好きになっているかもしれない。
……そう思ってた。
──だけど。
…そんな瞳で見られると、勘違いするよ?
「……ゆ、」
勇也。と、やっとのことで呼ぼうとした時。
勇也はパッと目線を下に落として、その手をどけた。
そして、
「…じゃあ、俺は帰るから。これからは気をつけろよ。
──“水野”。」
「……っ、」
──あぁ…。イタイ。
勇也がそう言いながら立ち上がり、落ちていた私の鞄を差し出す。
「あ…ありがとう。
──“広瀬くん”。」
声が震えているのが気付かれてしまいそう。
私は笑顔を顔に貼り付けて、その鞄を受け取った。
「…ん。じゃあな」
「うん、ばいばい」
私はそう言って小さくなる勇也の背中を見送った。
「……っう、……っ」
──誰もいなくなった廊下で一人涙を流す私。
…本当に、辛い。
ねぇ、もう呼んでくれないの…?
あの時みたいに。
“由莉”って…──。
…分かってる。
そんなこと言うのはおかしいって。
勇也は、もう私なんて忘れて、幸せになろうとしてるんだって。
私が一方的に、期待してるだけなんだって。
でも…、でも…──。
「もう1回…っ、由莉って言ってよ…っ」
ポタポタ、と床に涙が落ちていく。
辺りには誰もいない。
何もない。
だけど、私はどうしようもない思いを見つけてしまった。
「私…、私っ、まだ勇也が好きなんだよ……!」
まだ冬の寒い廊下で、私の声だけが廊下に響いていた。