幼なじみの恋愛事情
本編
ヤツが見ているであろうテレビの音を背中で感じながら、夜ごはんの仕度をし始めたわたし。
トントントン、と。テレビの音に野菜の切る音が交じる。
そして、料理の下準備、つまりすべての食材を切り終え、包丁を置いたそのとき。
「――…今日のごはんなに?」
「…!」
そう頭上からなんの前触れもなしに降ってきた声に、否応なしに体が跳ねた。
「ちょ、っと…!気配消して背後に回るのやめてくんない?」
「人聞き悪い言い方やめてよ」
なんて、クツクツと喉を鳴らすヤツ。
たぶんわたしの肩が揺れたことに対しての笑いだろう。
「てか、近いから」
なんで今日のごはん聞くために、こんな近づかなきゃならんのだ。
そう言ってやると。
「だってナギに触れたかったんだもん」
なんて、千歳は至極当然のように言ってのけた。
ちゃっかり後ろからわたしのお腹に手なんか回して。