初恋の終着駅
学校に向かって歩き始めた。
空を見上げたら、一面のうろこ雲が広がっている。青い色に薄っすらとレースを掛けたような秋らしい空。
これから始まる新学期を、改めて実感させられる。
「定期、見つかるといいね」
並んで歩く香澄も、私と同じように空を見上げていた。表情からは不安の色は消えて、明るさを増しているようだ。
「うん、ありがとう。あの駅員さんの名前、諏訪さんって言うんだって。さっき教えてくれたよ」
声も思っていたより明るくて安心した。
定期を失くしたと言い出した時は混乱して、今にも泣き出しそうだったのに。きっと、あの駅員さんとの会話のおかげだろう。
もうひとつ安心したこと。
さっき香澄が駅員さんと話していたのは、名前を聞いていたからだったんだ。
きっと見つかると、私たちは信じていた。