初恋の終着駅
坂代駅へ向かう私たちの足取りは軽かった。今朝、学校へ向かう時のペースとは明らかに違っている。
今朝の私たちを見た事情を知らない人の目には、きっと新学期が始まったから気分が落ち込んでいる生徒にしか映らないだろうけど。
駅に近づく私たちを見つけて、窓口に座っていた諏訪さんが立ち上がった。
待ちかねたと言いたげな笑顔を見せてくれたように見えたのが、たとえ私の勘違いだとしても嬉しい。
「あっ、お帰り。定期届いてるよ」
と言って、諏訪さんは駅舎の奥へ。駅長さんと話した後、香澄の定期券と紙切れを一枚持って戻ってきた。
「これで間違いないよね? 一応確認して、ここに受け取りのサイン貰える?」
「ありがとうございます」
香澄は両手で受け取った定期券をぎゅっと握り締めて、勢いよく頭を下げた。おでこの目指す先には、窓口に張り出した木製のカウンター。