初恋の終着駅
帰りの電車内、香澄は無口だった。
さっきの失態がよほど恥ずかしかったのか、定期券が見つかって安心したのか、シートに座って前方の車窓を流れる景色を眺めている。
それとも新学期が始まったから、気分が落ち込んでいるのだろうか。早速明日から六時間授業が始まるし、明後日からは体育祭の練習が始まるっていうし。
無理をして会話をしなくてもいいと思ったから、私も黙って景色を眺めていた。香澄とは、そんなことで気を遣うような友達じゃないと。
私が大手駅で降りるまで十五分、香澄と話したのは定期券が見つかってよかったということと、明日からお弁当が要るねという会話だけだった。
いつもなら体育祭の練習が始まるのが苦痛だとか話していたはずなんだろうけど、今日は話せなかった。