初恋の終着駅
翌朝、いつものように混雑を取り戻した大手駅。
人波の中で溺れかけている私を見つけて、香澄がくすっと笑ってる。いつもと変わらない笑顔に安心したのも束の間、人波とともに車内へと流されてく。
やっとの思いで香澄の待つドアの傍へと辿り着き、手摺に縋りついた。
「おはよう、やっぱり混んでるね」
「おはよう、麻衣。これが本来の姿なんだろうね、昨日が空き過ぎてただけなんだよ、また頑張らなきゃね」
香澄の言うように、昨日乗客が少なかったのがおかしなことだったんだ。
新学期が始まるのを警戒した通勤客が、率先して休暇を取っていたのかもしれない。社会人は有給というものがあるから、いいなぁ……高校にもあったらいいのに。
高校生なんて損だと思いながら、車内を見回した。