初恋の終着駅


改札口から吐き出される人の流れに、取り残されまいとして懸命だった。夏休み前の感覚を未だに思い出せないまま、ただ流れに身を委ねる。


窓口のカウンターには諏訪さんがいて、改札口を出ていく学生を見送っている。昨日と違っているのは、立っていること。


諏訪さんの視線を感じたから、慌てて目を逸らす。定期を持ち直して歩く速度を落とし、窓口から一番遠い自動改札機を選んで通り抜けた。


香澄は後れを取ってしまったようで、半歩ほど後ろにいて私が通った隣の改札機を抜けたのが視界の端に見える。


ゆっくりと窓口へと視線を移していく。


諏訪さんの顔には穏やかな笑み、視線の先には香澄がいる。後ろ姿の香澄が、ぺこりと頭を下げる。


すると諏訪さんは眼鏡の向こうの目を細めて、緩やかに口角を上げた。



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