初恋の終着駅


漠然と生まれた不安は日毎大きくなるばかりで、懸命に話題を探して話が途切れないように努力することさえ苦しくなってくる。


通学の車内で、あの車掌さんの声を聴いても香澄は反応をしなくなった。


耳を傾けるようには見えるけど、それ以上のことはない。顔を緩ませて赤くなったり、恥ずかしがったりすることもない。まるで興味が無くなったといった感じ。


何かあったの?


尋ねたいのに尋ねられず、私は車掌さんの声を聴きながら以前の香澄を思い出していた。


たわいない会話を交わして、笑い合えていた頃の香澄との記憶。その中に、諏訪さんはいない。


諏訪さんが、いつから坂代駅の窓口に居たのかわからない。香澄が定期券を落とさなければ、窓口に行かなければ、ずっと諏訪さんには気づかなかっただろう。


もしかすると、原因は諏訪さんかもしれないと思い始めていた。



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