初恋の終着駅
ショッピングモールのある霞駅までは、大手駅から特急に乗って二駅、二十分。坂代駅は途中の駅だけど、特急の停車駅ではないから通過する。
通り過ぎてく坂代駅のホームを見送っていると、諏訪さんの顔が浮かんだ。眼鏡の向こうに見えた優しい目と、笑ってくれた口元。そして香澄の頭を支えた大きな手。
あの手で、制帽の裾から覗いた髪を掴んだ。制帽を脱いだら、どんな髪型なんだろう。年はいくつなんだろう。
電車を降りてショッピングモールへと歩く妹の足取りは軽やかで、私は置いて行かれそうになってしまう。
「お姉ちゃん、歩くの遅い。ほら、信号が変わっちゃうじゃない」
半歩先を歩く妹が振り向いて、口を尖らせた。
「ごめん、無理。どうしてそんなに速いの? 信号変わってもいいじゃない」
「だめ、暑いから早く涼みたいの」
妹は私の腕を掴んで、点滅し始めた青信号の横断歩道を駆け出した。