初恋の終着駅


アイスクリームを口の中に放り込むとイチゴの優しい甘さが口の中いっぱいに広がる。消えていく味を引き止めるように、ゆっくりと目を細めた。


「お姉ちゃん、最近暗いよね? 何かあった?」


妹の声が私の邪魔をする。せっかく余韻を楽しんでいたのに。


だけど、なかなか鋭い指摘に驚かずにはいられない。


「ん? 何にもないけど?」

「ウソだ、疲れてる? それとも恋の悩み?」


さらっと流そうとしてるのに、突っ込んでくるんじゃない。妹って遠慮がないからホントに困る。


「バカ、そんなんじゃないよ。体育祭の練習が始まったから疲れてるの」

「そっか、お姉ちゃん運動音痴だから」

「それもあるけど、炎天下が堪えるの」

「そっちの方がダメなんじゃない? お姉ちゃんの学校、どうして五月じゃないの? 五月の方が涼しいのに」

「でしょ? 私の学校っておかしいのよ、文化祭だってね」


妹の高校は五月に体育祭があるし、普通に文化祭だってある。やっぱり学校の選択を間違えたのかもしれない。


でも今の高校に行かなかったら、香澄には会えなかった。




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