初恋の終着駅


私のバッグを持った車掌さんが、隣を歩いてる。私に歩幅を合わせて、ゆっくりとしたペースで。


制帽を外した横顔をちらりと見上げるだけで、ドキドキしてしまう。気づかれないようにと思うからか、それとも……


「もうすぐ体育祭だよね? 暑いのに大変だね、九月にやるのって南高校だけだよね」


気を遣って話し掛けてくれるのが嬉しい。


「はい、他の学校五月ですね」


ちゃんと答えなければと思うと体に力が入るけど、しんどいことさえ忘れさせてく。


「文化祭じゃなくて芸術鑑賞会って、まだやってるの?」

「あります、そんなに有名ですか?」

「まあ、有名と思う。それに俺、南高校だったから」


さらっと出てきた言葉なのに、私にはものすごく大きな衝撃。急に湧き上がる気持ちは親近感に似てる。


< 50 / 80 >

この作品をシェア

pagetop