初恋の終着駅
「ホントですか?」
「うん、卒業して七年……いや、もう八年かな?」
ということは車掌さんは二十五歳か二十六歳、私よりも八つか九つ年上になる。意識すると車掌さんの横顔が、さっきとは違って見えてきた。
「あ、ゲラちゃんって知ってる? 世界史の先生だけど?」
「知ってます、斎藤先生。車掌さんが居た時から居たんですね」
「うん、居た居た。ゲラちゃんも長いよなあ……」
車掌さんは目を細めた。あの目の向こうには、高校の頃の思い出が映っているんだろう。
どんな高校生だったのかな……と横顔に見惚れていると、急に車掌さんが振り返る。目を逸らす間もなく、ばっちり目が合ってしまって思わず足を止めた。
車掌さんもつられて足を止める。
何か言ってくれるのかと思ったのに、何にも言い出さないで私を見てる。
これじゃあ、まるで蛇に睨まれた蛙。今さら目を逸らすこともできなくて、胸が押し潰されそう。