初恋の終着駅


『麻衣ちゃん……』


また、声が聴こえる。


あなたが名前を呼んでくれるから、あなたの声が優しいから、暗闇の中でも怖くない。


もっと、名前を呼んでいて。
ずっと、名前を呼んでいて。


できるなら、呼んでくれるあなたの顔を近くで見たい。


「……ちゃん? お姉ちゃん?」


冷ややかな声に、ぐいっと肩を揺さぶられた。暗闇の中から一気に外に放り出されて呆然とする私の目に映ったのは、怪訝な顔をした妹。


「お姉ちゃん? 大丈夫?」

「う……ん、たぶん大丈夫」


妹の帰りを待っている間に、また眠ってしまっていたらしい。それにしてもよく眠れる。寝過ぎじゃないかと思うほど。


「ほら、杏仁豆腐買ってきたよ、食べる?」

「食べる、ありがとう」


ぶっきらぼうに差し出された杏仁豆腐は、ひんやりとして気持ちいい。さすが妹だ、私の好みをよくわかってる。




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