初恋の終着駅
改札口へと向かっているのは私たちだけ、登校時間まで時間はあるから急いだりしない。
「優しそうな人だったね、声からはもっとクールな感じかと思ったけど、人当たりの良さそうな感じかも」
「うん、優しくていい人だったよ」
昨日送ってくれた時の顔が、今でも鮮明に蘇る。私の名前を呼んでくれた声までも。
だけど、この気持ちをどう言い表せばいいのだろう。
自動改札機が見えると同時に、駅の窓口から覗いている頭に気づいた。カウンターに肘をついて身を乗り出した諏訪さんが、こちらを見ている。
諏訪さんは私たちをみとめて、きゅっと口角を上げた。安心したかのような穏やかな顔をして。
「おはよう」
と言って、諏訪さんが立ち上がる。
「おはようございます」
改札機を通りながら、私たちも挨拶を返した。