初恋の終着駅
両手で頬を覆ったまま、香澄は車掌さんの声に耳を傾けている。そんな香澄を見ながら、私も車掌さんの声を追っていた。
私が乗車した大手駅には電車の列車区があって、車両の入れ替えや乗務員さんが交代を行う。香澄は私より二駅先から乗ってくるけど、その時は他の車掌さんだったのだろう。
アナウンスが途切れた。
レールを滑る電車の振動が、ドアにもたれ掛かった背中からリズミカルに伝わってくる。
まだ耳には、車掌さんの声が心地よく残響してる。
どんな顔をしているのか、若いのか、背は高いのか、いろいろと気になってしまう。
だけど確かめるほど気になっている訳ではないし、勇気もない。機会があれば見てみたいと思う程度。それ以上の感情はない。
香澄は、どう思っているんだろう。