秘密
*その5*
あの日からナナの様子が変だ。
目が合わない。
明らかに避けられている。
何故だ?
その日もしつこく山本がナナを合コンに誘っているのをぼんやりと見ていた。
「たまには…行こうかな。」
「ホント⁉」
その返事を聞いた途端、我慢していた感情が爆発した。
「早瀬、ちょっとこい。」
細い手首を掴み、引きずるように非常階段の踊り場まで連れて行く。
「お試しとはいえ、俺は一応ナナの彼氏だよな。彼氏がいるのに合コン参加すんのか。」
黙ったまま俯くナナ。
何故だ。
なんでこんなことになった⁈
「俺が聞いてる横であんな返事するとか」
「彼氏じゃありません。」
見上げてきた意思の強い黒い瞳。
「課長はあたしの彼氏じゃない。」
「ナナ?」
「元カノとより戻したらいいじゃないですか。愛してるんでしょ。」
…‼
勘違いされた、と気付いた時にはナナはその場を立ち去っていた。
「クソッ‼」
壁を拳で殴ってみても痛みは胸の中の方が大きかった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ナナ、課長となにかあったの?」
隣のデスクで彩が問いかけてくる。
「ないわよ。気にしないで。」
そう。気にしない。
あの人が誰を好きになろうが愛そうが、あたしには関係ない。
あたしにはそんな権利ないんだから。
「ナナ…辛いの?」
不意に言われた言葉。
途端に心のなかに溢れ出す気持ち。
好き。
好き。
好きなの。
でも…
好きだけど。
ー一生地獄へ落ちてろ、淫乱女。ー
あの事が頭をしめる。
溢れ出した気持ちはついには唇を震わせて声になった。
「好き…なの、好きなの。だけどあたしじゃダメだからっ」
仕事があったにも関わらず、ナナは会社を飛び出した。
どこに向かう訳でもなく。
もう、どうにでもなれ、だ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
目が合わない。
明らかに避けられている。
何故だ?
その日もしつこく山本がナナを合コンに誘っているのをぼんやりと見ていた。
「たまには…行こうかな。」
「ホント⁉」
その返事を聞いた途端、我慢していた感情が爆発した。
「早瀬、ちょっとこい。」
細い手首を掴み、引きずるように非常階段の踊り場まで連れて行く。
「お試しとはいえ、俺は一応ナナの彼氏だよな。彼氏がいるのに合コン参加すんのか。」
黙ったまま俯くナナ。
何故だ。
なんでこんなことになった⁈
「俺が聞いてる横であんな返事するとか」
「彼氏じゃありません。」
見上げてきた意思の強い黒い瞳。
「課長はあたしの彼氏じゃない。」
「ナナ?」
「元カノとより戻したらいいじゃないですか。愛してるんでしょ。」
…‼
勘違いされた、と気付いた時にはナナはその場を立ち去っていた。
「クソッ‼」
壁を拳で殴ってみても痛みは胸の中の方が大きかった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ナナ、課長となにかあったの?」
隣のデスクで彩が問いかけてくる。
「ないわよ。気にしないで。」
そう。気にしない。
あの人が誰を好きになろうが愛そうが、あたしには関係ない。
あたしにはそんな権利ないんだから。
「ナナ…辛いの?」
不意に言われた言葉。
途端に心のなかに溢れ出す気持ち。
好き。
好き。
好きなの。
でも…
好きだけど。
ー一生地獄へ落ちてろ、淫乱女。ー
あの事が頭をしめる。
溢れ出した気持ちはついには唇を震わせて声になった。
「好き…なの、好きなの。だけどあたしじゃダメだからっ」
仕事があったにも関わらず、ナナは会社を飛び出した。
どこに向かう訳でもなく。
もう、どうにでもなれ、だ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇