秘密
*その2*
「いらっしゃい、待ってたのよ!」
玄関が開きにこやかな笑顔に迎えられる。
お腹が目立つ時期になったんだな、と思う。
女性が女から母親になる過程ってすごい。
麻美さん綺麗になった。
元々綺麗な人。圭には勿体無いくらいの人。
あたしのせいで随分辛い思いさせたのに、嫌な顔ひとつしない。
「圭ちゃんまだなのよー、上がって!」
「おじゃましまーす。」
お義姉さん。
自慢の兄の自慢のお嫁さん。
「ナナちゃん、しばらく見なかったら綺麗になったね!」
「麻美さんこそ。お腹出たねぇ。動く?」
「動いてるよ。触る?井村君も撫でてみて。こんばんは、って話しかけて。」
男の人にとって動くお腹、どうなのかな。恐る恐る麻美さんのお腹に手を当て、じっと固まったままの井村を見て、何だか可笑しくなってしまう。
「ベビィ、こんばんは。ナナだよ、元気かな?」
サワサワと優しく撫でたらポコん、と動いた。
「見た⁈返事してくれたよ!きゃー、可愛い!」
嬉しくてはしゃいでたら翔太さんが苦笑いしてた。
「ナナちゃんのこと、圭ちゃんが話しかけてるからわかるんだよ、きっと。」
麻美さんからそう言われて嬉しくてたまらなかった。
いいな、赤ちゃん。
その存在が幸せの象徴。
ふと翔太さんと目が合った。
優しく笑う彼の顔を見てたら、あぁ、あたし彼の赤ちゃん産みたいなって本気で思えた。
些細な喧嘩ばかりして、意地の張り合いして、泣いて怒ってばかりだけど。
一生彼と一緒に居たいな、って本気で思える。
しばらくして圭が帰ってきた。
あれ以来、圭と翔太さんはとても仲がいい。
それと、沢渡さん。
3人でよく連んで飲んだりしてる。
翔太さんだけ4歳年下なのに、違和感無く仲良くなってる。
「男って子供でしょ。」
食事を済ませ、盛り上がる男2人を尻目に、ダイニングテーブルについたままのあたし達。
食後のお茶を飲みながら色んなガールズトークしている。
「ですね。ふとしたときに、すっごく大人だなぁって感じるのに、素だと子供みたいで。」
ふふっと笑いあう。
「圭ちゃんもね、子供よ。ナナちゃんのことになると大人っていうか兄!って感じだけど、それ以外はね〜。」
一口、お茶を含むと麻美さんは言った。
「ナナちゃん、井村君とケンカした?泣きはらしたみたいな目だよ。」
…ばれてましたか。
「会社で、女の人に言い寄られてた。しかもね、抱きつかれてキスされそうになってた。」
思い出しても腹が立つ。
「井村君、イケメンだからねぇ〜。仕方ないって割り切らなきゃダメよ。彼がどうこうじゃなくて、周りがほっとかないんですもの。」
それはごもっともな意見です。
だからこそ相手を突き放して欲しいのに。
「大事にされてるわよ、ナナちゃんは。」
「そう、思います。」
だけどね。不安が募る。
全てを曝け出して、もう隠すものも何もなくて。
こんなあたしでいいのかな。
彼はあたしで幸せになれるのかな、って。
「あたしもずっと思ってたよ。
圭ちゃんにはもっと相応しいヒトがいるんじゃないか、あたしみたいな女じゃ圭ちゃんは満足しないんじゃないか、幸せになれないんじゃないかー、って。」
にっこり笑う麻美さんの口から同じ様な悩みがこぼれ落ちてビックリした。
「ナナちゃんもそうでしょ。自分に自信がない。欠落品みたいに感じてない?」
麻美さんには敵わない。
なんでもお見通しなんだね。
「欠落品でいいのよ。
お互いの欠落部分をお互いが埋め合えば。パズルのピースみたいにね。
2人でひとつ、なんだよね。夫婦ってそういうものだと、あたしは思ってる。」
「麻美さん、すごい。
悩みが飛んじゃった。あたしも翔太さんとそう有りたい。
2人でひとつ。そういう関係でいたい。」
胸の奥でほっこりと生まれた感情。
「なんか難しい話してるんだな。」
「圭がバカだからわかんないんだよーだ。ね、麻美さんっ。」
「バカとは何だ、バカとは。」
「あら、じゃあおバカって丁寧に言ってあげようかしら。」
麻美さんにまでバカ認定された圭は不貞腐れながらも優しくお腹をなでる。
「ベビはパパをバカとか言わないよな〜。」
…何、このデレ様は。
圭って子煩悩だろうな。
いいな、この夫婦、2人でひとつ。
「さて、そろそろ帰るか、ナナ。」
井村が腰をあげる。
「うん。麻美さん、無理しない様にね。
圭はちゃんとフォローしてあげてよね!」
荷物をまとめ、玄関に向かう。
「じゃあね、また来るね。」
見送ってくれる、優しい兄夫婦。
目標はあの2人。
玄関が開きにこやかな笑顔に迎えられる。
お腹が目立つ時期になったんだな、と思う。
女性が女から母親になる過程ってすごい。
麻美さん綺麗になった。
元々綺麗な人。圭には勿体無いくらいの人。
あたしのせいで随分辛い思いさせたのに、嫌な顔ひとつしない。
「圭ちゃんまだなのよー、上がって!」
「おじゃましまーす。」
お義姉さん。
自慢の兄の自慢のお嫁さん。
「ナナちゃん、しばらく見なかったら綺麗になったね!」
「麻美さんこそ。お腹出たねぇ。動く?」
「動いてるよ。触る?井村君も撫でてみて。こんばんは、って話しかけて。」
男の人にとって動くお腹、どうなのかな。恐る恐る麻美さんのお腹に手を当て、じっと固まったままの井村を見て、何だか可笑しくなってしまう。
「ベビィ、こんばんは。ナナだよ、元気かな?」
サワサワと優しく撫でたらポコん、と動いた。
「見た⁈返事してくれたよ!きゃー、可愛い!」
嬉しくてはしゃいでたら翔太さんが苦笑いしてた。
「ナナちゃんのこと、圭ちゃんが話しかけてるからわかるんだよ、きっと。」
麻美さんからそう言われて嬉しくてたまらなかった。
いいな、赤ちゃん。
その存在が幸せの象徴。
ふと翔太さんと目が合った。
優しく笑う彼の顔を見てたら、あぁ、あたし彼の赤ちゃん産みたいなって本気で思えた。
些細な喧嘩ばかりして、意地の張り合いして、泣いて怒ってばかりだけど。
一生彼と一緒に居たいな、って本気で思える。
しばらくして圭が帰ってきた。
あれ以来、圭と翔太さんはとても仲がいい。
それと、沢渡さん。
3人でよく連んで飲んだりしてる。
翔太さんだけ4歳年下なのに、違和感無く仲良くなってる。
「男って子供でしょ。」
食事を済ませ、盛り上がる男2人を尻目に、ダイニングテーブルについたままのあたし達。
食後のお茶を飲みながら色んなガールズトークしている。
「ですね。ふとしたときに、すっごく大人だなぁって感じるのに、素だと子供みたいで。」
ふふっと笑いあう。
「圭ちゃんもね、子供よ。ナナちゃんのことになると大人っていうか兄!って感じだけど、それ以外はね〜。」
一口、お茶を含むと麻美さんは言った。
「ナナちゃん、井村君とケンカした?泣きはらしたみたいな目だよ。」
…ばれてましたか。
「会社で、女の人に言い寄られてた。しかもね、抱きつかれてキスされそうになってた。」
思い出しても腹が立つ。
「井村君、イケメンだからねぇ〜。仕方ないって割り切らなきゃダメよ。彼がどうこうじゃなくて、周りがほっとかないんですもの。」
それはごもっともな意見です。
だからこそ相手を突き放して欲しいのに。
「大事にされてるわよ、ナナちゃんは。」
「そう、思います。」
だけどね。不安が募る。
全てを曝け出して、もう隠すものも何もなくて。
こんなあたしでいいのかな。
彼はあたしで幸せになれるのかな、って。
「あたしもずっと思ってたよ。
圭ちゃんにはもっと相応しいヒトがいるんじゃないか、あたしみたいな女じゃ圭ちゃんは満足しないんじゃないか、幸せになれないんじゃないかー、って。」
にっこり笑う麻美さんの口から同じ様な悩みがこぼれ落ちてビックリした。
「ナナちゃんもそうでしょ。自分に自信がない。欠落品みたいに感じてない?」
麻美さんには敵わない。
なんでもお見通しなんだね。
「欠落品でいいのよ。
お互いの欠落部分をお互いが埋め合えば。パズルのピースみたいにね。
2人でひとつ、なんだよね。夫婦ってそういうものだと、あたしは思ってる。」
「麻美さん、すごい。
悩みが飛んじゃった。あたしも翔太さんとそう有りたい。
2人でひとつ。そういう関係でいたい。」
胸の奥でほっこりと生まれた感情。
「なんか難しい話してるんだな。」
「圭がバカだからわかんないんだよーだ。ね、麻美さんっ。」
「バカとは何だ、バカとは。」
「あら、じゃあおバカって丁寧に言ってあげようかしら。」
麻美さんにまでバカ認定された圭は不貞腐れながらも優しくお腹をなでる。
「ベビはパパをバカとか言わないよな〜。」
…何、このデレ様は。
圭って子煩悩だろうな。
いいな、この夫婦、2人でひとつ。
「さて、そろそろ帰るか、ナナ。」
井村が腰をあげる。
「うん。麻美さん、無理しない様にね。
圭はちゃんとフォローしてあげてよね!」
荷物をまとめ、玄関に向かう。
「じゃあね、また来るね。」
見送ってくれる、優しい兄夫婦。
目標はあの2人。