秘密
*その4*
良い事と悪い事はじゅんぐりにやってくるって、誰かが言ってたっけ。
「移動、ですか?」
「うん、そう。井村を移動させるとデータ課を一から作り直さなきゃならない。
申し訳ないんだが、君に移動してもらう事が会議で決定した。」
やっぱり。
そうなるんじゃないか、って翔太さんが言ってたから驚きはしないけど。
「わかりました。引継ぎなどはどうしましょうか?」
「それは井村の方に任せてある、営業課の方は沢渡がいるから、彼にきいてもらえるか?」
申し訳なさそうな表情の部長。
部長が悪いわけじゃないのに。
「失礼します。」
あぁ、彩と隣り合わせも今週いっぱいかぁ。
4年もデータ課に居たし、彩と、翔太さんと、みんなとずっと一緒だったから…寂しくないといったら嘘になる。
重い足取りで、部所に戻ると彩が駆け寄って来た。
「ナナ、移動ってホント⁈」
既に涙目の彩。
バカだなぁ、会社は同じなのに。
「うん。営業課の補佐って感じ。あっちでもデータ管理させられるみたいよ、全くあたしはパソコンじゃないっていうのよね。」
務めて明るく言うと余計に彩が泣きそうに顔を歪める。
「ナナがいないとあたしのフォロー誰がしてくれるのよ〜」
…そこか。
「課長に鍛えてもらいなさい、容赦ないわよ〜。」
自分の彼氏を捕まえて言うセリフじゃないけどね。
彼氏じゃなかった時にかなり鍛えられたっけ、あたし。
「早瀬」
デスクについたままの課長に呼ばれる。
「はい。」
「話聞いたか?」
「先ほど。営業課への移動を言われました、今週いっぱい、よろしくお願いします。」
頭を下げる。
すると申し訳なさそうな井村の表情が目に入った。
「すまん。俺が移動するって言ったんだが聞き入れて貰えなかった。迷惑かける。」
そうなんだ。
でもここには翔太さんが必要。
翔太さんが居なければ回らない部所。
「いえ、大丈夫です。」
にこりと笑うとホッとしたのか井村の表情にも笑みが戻る。
不安がないと言えないけど、やるしかない。
だって、課長と。
彼と一緒に居ると決めたのはあたしだから。
みんなから、残念だね、また戻っておいで、って声をかけてもらえて嬉しかった。ここで、あたしは役に立ててたのかな。
「早瀬〜」
昼過ぎ。
データ課に響き渡る呑気な声。
「沢渡さん。」
相変わらずのマイペース加減で側にやってくるとデスクに書類の束をバサッと置いた。
「入力しておいて〜。やり方はここと同じ、フォルダを新規で作成してそこに保存したら、社内メールで連絡して。じゃあねぇ〜」
去り際に彩へニコリと微笑むと、彩がひとり悶えていた。
「ナナの周り、イケメンばっかり〜!」
「イケメン…彩は好きだね。そこばっかり追求するから彼氏が出来ないんだよ。」
がっくり肩を落とす彩。
幸せになって欲しいけど。親友だから。
「沢渡さん、紹介してねぇ〜!」
「ムリよ、沢渡さん彼女いるから。もう8年くらい付き合ってるよ。」
と、言った後で…。
「ナナ、何で知ってるの?」
あ、しまった。つい言っちゃった。
「あー、まぁね、ちょっと。」
誤魔化しながら貰った書類をパラパラ捲る。
時間かかりそう。新規作成だしね。
「ナナだけずるいっ、あたしにもイケメン分けてよー。」
お菓子みたいに言わないで。
「彩のいうイケメンがどんなのかわかんないのよ、あたし。」
「課長とかー、沢渡さんとかー、ま、基本は顔かな〜。」
…ついていけないわ。
「ごめん、仕事に時間かかりそうだから集中するね。」
はいは〜いって軽い返事が返って来る。
集中させなきゃ、終わらないや。
翔太さんと一緒に帰りたいし。頑張らなきゃね。
「移動、ですか?」
「うん、そう。井村を移動させるとデータ課を一から作り直さなきゃならない。
申し訳ないんだが、君に移動してもらう事が会議で決定した。」
やっぱり。
そうなるんじゃないか、って翔太さんが言ってたから驚きはしないけど。
「わかりました。引継ぎなどはどうしましょうか?」
「それは井村の方に任せてある、営業課の方は沢渡がいるから、彼にきいてもらえるか?」
申し訳なさそうな表情の部長。
部長が悪いわけじゃないのに。
「失礼します。」
あぁ、彩と隣り合わせも今週いっぱいかぁ。
4年もデータ課に居たし、彩と、翔太さんと、みんなとずっと一緒だったから…寂しくないといったら嘘になる。
重い足取りで、部所に戻ると彩が駆け寄って来た。
「ナナ、移動ってホント⁈」
既に涙目の彩。
バカだなぁ、会社は同じなのに。
「うん。営業課の補佐って感じ。あっちでもデータ管理させられるみたいよ、全くあたしはパソコンじゃないっていうのよね。」
務めて明るく言うと余計に彩が泣きそうに顔を歪める。
「ナナがいないとあたしのフォロー誰がしてくれるのよ〜」
…そこか。
「課長に鍛えてもらいなさい、容赦ないわよ〜。」
自分の彼氏を捕まえて言うセリフじゃないけどね。
彼氏じゃなかった時にかなり鍛えられたっけ、あたし。
「早瀬」
デスクについたままの課長に呼ばれる。
「はい。」
「話聞いたか?」
「先ほど。営業課への移動を言われました、今週いっぱい、よろしくお願いします。」
頭を下げる。
すると申し訳なさそうな井村の表情が目に入った。
「すまん。俺が移動するって言ったんだが聞き入れて貰えなかった。迷惑かける。」
そうなんだ。
でもここには翔太さんが必要。
翔太さんが居なければ回らない部所。
「いえ、大丈夫です。」
にこりと笑うとホッとしたのか井村の表情にも笑みが戻る。
不安がないと言えないけど、やるしかない。
だって、課長と。
彼と一緒に居ると決めたのはあたしだから。
みんなから、残念だね、また戻っておいで、って声をかけてもらえて嬉しかった。ここで、あたしは役に立ててたのかな。
「早瀬〜」
昼過ぎ。
データ課に響き渡る呑気な声。
「沢渡さん。」
相変わらずのマイペース加減で側にやってくるとデスクに書類の束をバサッと置いた。
「入力しておいて〜。やり方はここと同じ、フォルダを新規で作成してそこに保存したら、社内メールで連絡して。じゃあねぇ〜」
去り際に彩へニコリと微笑むと、彩がひとり悶えていた。
「ナナの周り、イケメンばっかり〜!」
「イケメン…彩は好きだね。そこばっかり追求するから彼氏が出来ないんだよ。」
がっくり肩を落とす彩。
幸せになって欲しいけど。親友だから。
「沢渡さん、紹介してねぇ〜!」
「ムリよ、沢渡さん彼女いるから。もう8年くらい付き合ってるよ。」
と、言った後で…。
「ナナ、何で知ってるの?」
あ、しまった。つい言っちゃった。
「あー、まぁね、ちょっと。」
誤魔化しながら貰った書類をパラパラ捲る。
時間かかりそう。新規作成だしね。
「ナナだけずるいっ、あたしにもイケメン分けてよー。」
お菓子みたいに言わないで。
「彩のいうイケメンがどんなのかわかんないのよ、あたし。」
「課長とかー、沢渡さんとかー、ま、基本は顔かな〜。」
…ついていけないわ。
「ごめん、仕事に時間かかりそうだから集中するね。」
はいは〜いって軽い返事が返って来る。
集中させなきゃ、終わらないや。
翔太さんと一緒に帰りたいし。頑張らなきゃね。