秘密
*その3*
好きとか特別な感情を持っているわけじゃない人と、恋人繋ぎで手を繋いで歩いている。
ナナにとっては不思議な感覚。
というか、なぜこうなってる?
あたし、なんで受け入れてるの⁈
「あの…課長。」
…。
「課長?」
…。
「井村課長!」
「んぁ?あ、悪い、考え事してた。」
…は?考え事?何なのよ、この人!
「手を離してください…」
「断る。」
即答。
何なの?
新手の嫌がらせ?
男ってみんなこうなの⁉
「離して!こういうのあたしは嫌なの!」
腕を振り払おうと力で訴えてみる。
ところが。
手は離れるどころか引き寄せられ、暴れるあたしをこともあろうか井村課長は抱きしめたのだ。
道行く人達が、面白そうに眺めながら通り過ぎて行く。
「どうしてなのかは、俺もわからないんだ。ただ…早瀬が気になってしかたない。気付くと目で追ってるんだ。」
….それ…どういう意味なの?
っていうか、往来で恥ずかしいじゃない!
「正直いって自分でもこんな経験がないから戸惑ってる。
…どうしたらいい?」
見上げた課長の顔は薄っすらと赤くて…。
「聞かないでください!」
こっちまで赤面してしまう。
「人は独りじゃ生きていけないんだ。寄り添う相手がこの世のどこかにいるんだ。それが早瀬ならいいなと俺は思ってる。」
真っ直ぐに見つめられて溶けてしまいそう。
「そんな事言われても…困ります…。」
綺麗な黒いふたつの瞳がナナを見つめて離さない。
怖い。
それなのに、目をそらせない。
いきなりの展開に頭が追いつかない。
入社して4年。
女ったらし、来るもの拒まず、誰にも本気にならない、そう聞いていた。ナナ自身そう言う目でしか見てこなかった井村が、自分に好意らしきものを持ってくれている。
自分はどうなんだろう。
でも…
男なんてみんな同じだ。
身体だけ。
…きっと井村課長もあいつと一緒。
「あたしは1人で生きて行くって決めてるんです。離してください!」
突き飛ばそうと井村の胸を力任せに押す。
…が、押すことすら出来なかった。
「力で敵うわけないだろ。」
突き飛ばし損ねたナナの両手を掴み、顔を寄せる。
「自分でもどうしたらいいかわからないんだ。協力しろよ。」
「…!そっ、それが人にお願いする態度なんですかっ!」
唇が触れそうな距離での会話に、否応なく顔が火照る。
「じゃあちゃんとお願いしたら協力するのか?」
「嫌ですっ」
「早瀬。」
「嫌っ」
「早瀬。」
「やめてっ!」
「ナナ…」
「‼」
有無を言わせない真っ直ぐな瞳。
ずるい。
こんな真っ直ぐに言われたらNOなんて答えられない。
「すぐに抱かせろなんて言わない。
お前が嫌がることは絶対にしない。
だから…お試しで構わないから協力しろよ。」
…ナナのYESの言葉は井村の唇に吸い盗られた。
ナナにとっては不思議な感覚。
というか、なぜこうなってる?
あたし、なんで受け入れてるの⁈
「あの…課長。」
…。
「課長?」
…。
「井村課長!」
「んぁ?あ、悪い、考え事してた。」
…は?考え事?何なのよ、この人!
「手を離してください…」
「断る。」
即答。
何なの?
新手の嫌がらせ?
男ってみんなこうなの⁉
「離して!こういうのあたしは嫌なの!」
腕を振り払おうと力で訴えてみる。
ところが。
手は離れるどころか引き寄せられ、暴れるあたしをこともあろうか井村課長は抱きしめたのだ。
道行く人達が、面白そうに眺めながら通り過ぎて行く。
「どうしてなのかは、俺もわからないんだ。ただ…早瀬が気になってしかたない。気付くと目で追ってるんだ。」
….それ…どういう意味なの?
っていうか、往来で恥ずかしいじゃない!
「正直いって自分でもこんな経験がないから戸惑ってる。
…どうしたらいい?」
見上げた課長の顔は薄っすらと赤くて…。
「聞かないでください!」
こっちまで赤面してしまう。
「人は独りじゃ生きていけないんだ。寄り添う相手がこの世のどこかにいるんだ。それが早瀬ならいいなと俺は思ってる。」
真っ直ぐに見つめられて溶けてしまいそう。
「そんな事言われても…困ります…。」
綺麗な黒いふたつの瞳がナナを見つめて離さない。
怖い。
それなのに、目をそらせない。
いきなりの展開に頭が追いつかない。
入社して4年。
女ったらし、来るもの拒まず、誰にも本気にならない、そう聞いていた。ナナ自身そう言う目でしか見てこなかった井村が、自分に好意らしきものを持ってくれている。
自分はどうなんだろう。
でも…
男なんてみんな同じだ。
身体だけ。
…きっと井村課長もあいつと一緒。
「あたしは1人で生きて行くって決めてるんです。離してください!」
突き飛ばそうと井村の胸を力任せに押す。
…が、押すことすら出来なかった。
「力で敵うわけないだろ。」
突き飛ばし損ねたナナの両手を掴み、顔を寄せる。
「自分でもどうしたらいいかわからないんだ。協力しろよ。」
「…!そっ、それが人にお願いする態度なんですかっ!」
唇が触れそうな距離での会話に、否応なく顔が火照る。
「じゃあちゃんとお願いしたら協力するのか?」
「嫌ですっ」
「早瀬。」
「嫌っ」
「早瀬。」
「やめてっ!」
「ナナ…」
「‼」
有無を言わせない真っ直ぐな瞳。
ずるい。
こんな真っ直ぐに言われたらNOなんて答えられない。
「すぐに抱かせろなんて言わない。
お前が嫌がることは絶対にしない。
だから…お試しで構わないから協力しろよ。」
…ナナのYESの言葉は井村の唇に吸い盗られた。