週末シンデレラ番外編SS集
休みの日に家へお邪魔したとき、いろんな資料がテーブルの上にあった。会社だけではなく、家に帰ってからも仕事をしているみたい。
無茶して身体を壊さないか心配だけど……イキイキしてるからまだ見守っていよう。
わたしはそんなことを考えながら征一郎さんを見つめていた。すると……。
「……なにか、言いたいことがあるのかな?」
「え? あっ、す、すみません……」
どうやら見つめすぎていたらしい。
わたしの視線を気にした征一郎さんが、眼鏡をグッと押し上げて、気まずそうに口を開いた。
「いや、わかっているんだ。ふたりきりのときくらい仕事の話はやめないといけないな……すまない。気をつけるよ」
「ち、違うんです! そうじゃなくて……」
仕事の話がイヤだったわけじゃない。
仕事を頑張っている征一郎さんを尊敬して、やっぱり好きだなぁ……と思っただけなのに。
そうだ。自分なりに気持ちを伝えるって決めたんだし、ここで伝えられたら……。
「そ、そうじゃなくて……し、仕事を頑張っている征一郎さんがす……すっ、か、かっこいいなぁ……と、思いまして……」
「詩織……」
「いえ、あのっ……な、なんでもないですっ」
わたしは恥ずかしさを隠すために、水が入ったグラスを口へ運ぶ。
ああ、もう……なんでうまく言えないんだろう。
付き合う前や、付き合いはじめの方が、もっとうまく口にできていた気がする。前より恥ずかしいと感じる気持ちが強くなった。
以前は気持ちをわかってもらおうと必死だったけど、今は自分をよく見せようと無意識に思っているのかもしれない。
「好き」って口にすると安っぽくなるから言えないんじゃなくて、自分がかっこ悪くならないよう、気にしてしちゃってるのかな……。
それでも、征一郎さんは耳を赤くして照れてくれていたので、わたしの気持ちは少し伝わったようだった。