週末シンデレラ番外編SS集
それからご飯を食べ終えると、静かな住宅街の中を、駅まで並んで歩いた。
車は通らないし、歩いている人もいない。見上げるとお月様がほんのりと輝いていて、星がキラキラと瞬いていた。
ふたりきりの夜道は落ち着かないほど胸が高鳴るのに、ずっと駅に着かなければいいのにと思えるほど、居心地がよくて幸せを感じる。
「さっきの話だけど……」
「え?」
「詩織が……上川くんに取られても仕方ないっていう話」
「あ、はい……」
まさか……仕事が忙しすぎるから別れよう……なんて言われるのかな。で、でも食事中、そんな態度ひとつもなかった……。
幸せを感じていたばかりなのに、急に不安に駆られ始める。
細い路地裏に入ると、征一郎さんが足を止めた。
薄暗い中で、征一郎さんが真摯な表情でわたしをじっと見つめてくる。
「俺は……もともと気も利かないし、気遣いが下手だから、詩織に不満を抱かせたり、寂しい思いをさせたりするかもしれない。でも、どれだけ忙しくなっても、きみを手離したくないと思っている。俺なりに……きみのことは考えていて……」
「……は、はい」
別れ話じゃなくてよかった……考えすぎだったみたい。それどころか、征一郎さんは精一杯、気持ちを伝えてくれようとしてくれている。
「まぁ、俺なりじゃなくて……きみがどう思うかが重要なんだけど。とにかく、俺はきみがいるから頑張れるんだ。だから、もし……不満があれば言ってほしいし、応えられるくらいの余裕は持ち合わせていたいと思っている」
「征一郎さん……」
胸の奥から嬉しさが込み上げてくる。言葉をもらえることも嬉しいけど、なにより伝えてくれようとしている姿に自分が愛されているんだと実感する。