週末シンデレラ番外編SS集
メインの和牛のステーキやデザートのブリュレもすごくおいしかった。
ディナーを堪能して外に出ると、頬を切るような冷たい風が吹き、マフラーを口元に寄せた。
このまま駅まで歩いて……それでお別れ……か。
隣を見上げると、チャコールグレーのコートを着た征一郎さんは、白い息を吐きながら駅の方を見つめていた。
街灯に照らされた顔が切なそうに見えるのは、わたしの思い込みだろうか。
久しぶりのデートだからか、クリスマスだからか……いつも以上に離れがたい。でも、明日は仕事だから……こんな気持ち、征一郎さんの邪魔になってしまう。
わたしは彼から目を離すと、マフラーをさらに口元へ寄せ、顔を隠すようにした。
「明日は仕事か……もっと詩織とゆっくりしたかったな」
征一郎さんも同じことを思ってくれていたらしく、肩を落として大きくため息をついた。
もしかして……今って「わたしももっと一緒にいたい!」なんてワガママ言ってもいいタイミングなのかな? それとも、ただ残念がってくれているだけ?
で、でも……クリスマスだし! ちょっとくらいワガママ言って……。
「あの、わたしも……」
「けど……もう、時間も遅いな……」
「っ……あ、はい……そう、ですね」
「もっと一緒にいたい」と言おうとしたのに、征一郎さんの声とかぶってしまって言えなかった。