週末シンデレラ番外編SS集
「このあたりにしようか。レジャーシート、貸してもらえるか?」
「はい……あっ、こっち側、引っ張りますね」
たくさんの桜の木が並んだ公園は、お花見をしている家族連れやカップル、会社の宴会をしている人たちで賑わっていた。
わたし達も一本の桜の木の下が空いているのを見つけ、そこにレジャーシートを広げる。
「じゃあ、さっそくお弁当を食べましょうか」
「ああ、約束した日から楽しみにしていた。俺は花より団子かもしれない。……あ、もちろん、詩織と食べるから……だからな」
「はい、わかってますよ」
こんなに楽しみにしてもらえていたなら、早起きして頑張ったかいがあった。わたしは嬉しくなりながら、自信作のフタを開けた。
「っ! すごいな……! こんなにたくさん……しかも彩りがキレイだな。食べるのがもったいない」
征一郎さんは興奮気味に目を輝かせる。予想以上の反応に、食べてもらってからの感想も期待してしまう。
「いいえ、食べてもえないとさらにもったいないことになります。なので、いただきましょう」
「ああ、いただきます!」
征一郎さんは手を合わせると、勢いよく食べ始めた。その姿がかわいらしくて、ついじっと見てしまう。
あ、やっぱり卵焼きから食べた。おにぎりは鮭だよね。うん、ホウレン草の胡麻和えも好きだもんね。
自分の中の征一郎さんの好みと、彼が食べるものを答え合わせしていく。どれも美味しそうに、夢中で食べてくれていた。
そろそろ「美味しい」のひと言がもらえるかな……なんて、思いながらお茶を淹れる。しかし、征一郎さんはふと箸の手を止めた。
「……征一郎さん?」
美味しくなかったかな?
彼の顔を見ると、眉間にしわを寄せて、なにか難しそうな顔をしていた。
「えっと、あの……どうか、しましたか? 美味しくなかった……とか?」
今までで一番美味しくできたと思ったけれど、征一郎さんの口には合わなかっただろうか。それとも、時間が経って味が落ちた……?
オロオロとしていると、征一郎さんは眼鏡を押し上げ、静かにため息をついた。
「……このお弁当には、詩織の好きなものは入っているのか?」
「えっ……?」
突然の質問に目を丸くすると、征一郎さんがじっとわたしを見つめてくる。