等心大〜tou・sin・dai〜
バスルームの
せまい脱衣スペースで
服を脱ぐ。




私用のスエットも、
ハブラシも
化粧品も
下着も

いつでも泊まれるように
置いてある。



クレンジングをしながら
ふと思い出した。



初めて
この部屋に泊まった日。

シャワーを浴びたあと
また薄くメイクしたっけ。

いつから
スッピン見せるように
なったんだっけ。

忘れちゃった。





安心できる仲、は
結婚において
重要なポイントかもしれない。



でも安心と
緊張感のないのとは
どう違うのか。



私にとって
やはり結婚は未知だ。






手早くシャワーを浴び
洗面スペースの
小さな鏡を見ながら
化粧水や美容液をのばす。



――結婚したら
もっと広いところに
引越したいな。



なんてことが
頭の中をよぎって
フッと笑った。

やっぱり私、
友貴と結婚するのかな。







バスルームを出ると
友貴がビールを飲んで
テレビを見ていた。



「彩の風呂は
 いつも長いな」

「だって女だもん」

「女って
 めんどくせーなぁ」




――そう。
女ってめんどくさいの。



「彩も飲めば?」

ビールの缶を
片手でかるく持ち上げて
友貴が言った。

「いい。
 明日むくむもん」

「別にいいじゃん」

「よくないの」



明日も仕事だし
友貴の部屋に泊まると
朝のマッサージができない。
25にもなると
いろいろ気をつかうのだ。




「じゃあもう寝るか」


セミダブルのベッドに
くっついて横になる。



シーツからも
友貴の匂いがする。



友貴がキスをして
私たちは
抱き合って眠った。
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