等心大〜tou・sin・dai〜
「遠慮しないで
 たくさん食べて」


母の手料理が
これでもかといわんばかりに
テーブルに並んでいる。


「朝からこんなに食べれないよ」

友貴が泊まったからって
朝からハリキリすぎ。
呆れちゃうくらい。


「彩はともかく
 友貴君は男の子でしょ」

「すみません、いただきます!」

「友貴、無理しないでいいよ」

「美味そうじゃん。
 彩も腹の子のために食べろよ」



ぱくぱく美味しそうに
料理をたいらげる友貴。

いつも朝食べないのは
私に合わせてくれてたのかもしれない。

私は食欲がなく
薄めのコーヒーをチビチビ飲んだ



「妊娠中は貧血になりやすいから
 少しずつでも食べないと」

「だって食欲ないんだもん」

心配する母にイラだち
そっけない態度をとる。

小さな頃は
母に心配されると嬉しかったのに
いつのまにか
心配されるのが窮屈になった。

子供じゃない、って気持ちが
そうさせるのかもしれない。

大人になると
親は多かれ少なかれ
うっとおしい存在になる。



「新居も探さないとねぇ」

「はい、なるべく早く、って
 考えてます」

「お産もすること考えると
 近くがいいかしらねぇ」


お節介をやく母に
イライラして
私は席を立った。


「彩?」

「私達が決めるんだから
 いちいち口出さないで」

「でも初めてのお産だし
 あなたも近くだと安心かと…」

「それは私が考えるから」


母はしゅんとして黙った。
ひどいことをしたような気になる。

ううん、ひどいことした。
母にやつあたりしたんだ。
不安だから。



「もう行こう」

私は友貴の手をひき
家を出た。
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