等心大〜tou・sin・dai〜
「お母さん。話があるんだけど」


緊張して
声がこわばった。

その声に
父も顔を上げた。



「お父さんにも。」

しっかりと、私が言うと
父は静かに箸を置き、
私をまっすぐに見た。


「あらあら、どうしたの?」

母も椅子に座り、
私を見る。



ゴクン、と喉の奥で唾を飲み
私は両親が聞き逃さないように
ハッキリと、言った。




「私、結婚しないことにした。
 高原さんにも今話してきた。」




母は驚いた顔をした。
父は険しい顔をしている。
予想通りといえば
そうかもしれない。



「…いったい何があったの?」


母は心配そうに問いかけた。


母はいつも私を心配してくれる。
私は決して、
いい娘ではなかったのに。

こんな生き方をさせるために
産んだわけではないだろうに。



「お腹の子…
友貴の子じゃないかもしれないの」

「そんな…じゃあ…
 どうするつもりなの…」


母は今にも倒れてしまいそうな程
青い顔をしている。


母にとってみれば
こんな出来事、想像もつかないことだろう。


娘が健全でなくて
どんなに傷ついているだろう。
そして
傷つけたのは私なのだ。



父の気持ちは
表情から読みとれない。
相変わらず険しい顔をしている。

私に失望してるのか
それとも
ハナから期待もしてないのか
父の心はいつも読めない。
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