等心大〜tou・sin・dai〜
新しい携帯の色は
パールホワイト。
何もかも真っさらにして
新しく始めたい私は
ショップでこの色を一目みて気にいった。
リビングのソファーに横になり
新しい番号とアドレスを
大学時代の友達にメールで送る。
まだ近況は書かなかったけど
出産したら
赤ちゃんの写真を
みんなに送ることを想像して
心が躍った。
「あら、携帯変えたの?」
母が覗きこむ。
「うん。あ、番号も変えたから」
「何かあったら困るから
あとで書いておいてくれる?」
「うん」
そういえば
母はいまだに携帯電話を持っていない。
ほぼ一日中家にいるから
必要がないのかもしれない。
「ねぇ、それ写真も撮れるの?」
「…今の携帯はみんな撮れるよ」
「お母さんも買おうかしら」
母がそんなこと言うとは
思ってもみなかったので
私はビックリした。
「えっ!なんで?」
「初孫が産まれるんだもの。
たくさん撮って持ち歩きたいわ」
「…写真でいいんじゃない?
デジカメの方が画質いいし」
「あら、そうなの」
母は機械オンチだから
どうせ携帯は使いこなせない。
母もそれはわかってるのに
気持ちが、嬉しかった。
ねぇ赤ちゃん
両親の愛情、
あなたのおかげで
知ることができたよ。
玄関のドアが開く音がして
母は
「あら、お父さんかしら」
とリビングを出て行った。
私は真新しい携帯を見つめて
ぼんやりと友貴を思い出した。
前の携帯の電話帳からも
友貴の名前は
削除してしまったけど
番号も、アドレスも、
しっかりと覚えている。
忘れることなんて、できない。
パールホワイト。
何もかも真っさらにして
新しく始めたい私は
ショップでこの色を一目みて気にいった。
リビングのソファーに横になり
新しい番号とアドレスを
大学時代の友達にメールで送る。
まだ近況は書かなかったけど
出産したら
赤ちゃんの写真を
みんなに送ることを想像して
心が躍った。
「あら、携帯変えたの?」
母が覗きこむ。
「うん。あ、番号も変えたから」
「何かあったら困るから
あとで書いておいてくれる?」
「うん」
そういえば
母はいまだに携帯電話を持っていない。
ほぼ一日中家にいるから
必要がないのかもしれない。
「ねぇ、それ写真も撮れるの?」
「…今の携帯はみんな撮れるよ」
「お母さんも買おうかしら」
母がそんなこと言うとは
思ってもみなかったので
私はビックリした。
「えっ!なんで?」
「初孫が産まれるんだもの。
たくさん撮って持ち歩きたいわ」
「…写真でいいんじゃない?
デジカメの方が画質いいし」
「あら、そうなの」
母は機械オンチだから
どうせ携帯は使いこなせない。
母もそれはわかってるのに
気持ちが、嬉しかった。
ねぇ赤ちゃん
両親の愛情、
あなたのおかげで
知ることができたよ。
玄関のドアが開く音がして
母は
「あら、お父さんかしら」
とリビングを出て行った。
私は真新しい携帯を見つめて
ぼんやりと友貴を思い出した。
前の携帯の電話帳からも
友貴の名前は
削除してしまったけど
番号も、アドレスも、
しっかりと覚えている。
忘れることなんて、できない。