等心大〜tou・sin・dai〜
母は手際よくタクシーを呼び、
病院に電話をしてくれた。


「すぐだからね」

「…うん…」


母は私の肩を
タクシーの中でも
しっかりと抱いていた。


痛みは強くなるばかりで
私は「痛い…痛い…」と
うめき続ける。





「西村さん!大丈夫?!」

いつもの先生の顔を見て
少しホッとする。


腰の痛みを告げると
すぐに診察室へと連れられる。



横になった瞬間
足の間から何かが下りた。


―…え?


足元を見る。
診察台のシーツに
大量の血がにじみ、広がる。



「先生っ…血が…赤ちゃんは…」

「今診てみましょうね。
 落ち着いて」



怖いよ。
赤ちゃん、どうなっちゃったの?


エコーの画面には
赤ちゃんがしっかりと
映っている。


どうか、どうか助けて下さい。


祈るような気持ちでいると
先生は
「内診もしますね」
と感情の読み取れない声で言った。
< 139 / 150 >

この作品をシェア

pagetop