等心大〜tou・sin・dai〜
「…ふざけんなっ…」

「…え?」



友貴が声を押し殺したように
でも感情を込めて
しっかりと、言った。



「お母さんになるって
 そう決めたんだろ?」

「…」




なりたかったよ。
すごく
すごく
なりたかった。


でも
なれないんだって。


友奈は
助からないんだって。





「まだいるよ」


友貴の顔を見ると
友貴も、泣いていた。


「まだ、生きてんだよ。
 彩の母親らしいとこ、
 最後に見せてやれよ。
 しっかりと、産んでやろうよ」






あぁ、そうだ。

友奈はまだ
ここにいるんだ。




涙が溢れる。


友奈。

友貴も来てくれたよ。



私、ちゃんと
普通の母親らしく
あなたを産むよ。

たとえ
私の顔を
あなたが見ることはなくても。


あなたの声を
聴くことはなくても。




私の最初で最後の
母親としての、やるべき事。
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