等心大〜tou・sin・dai〜

どっちつかず

――夢の中に
大川さんが出てきた。

大川さんは
私を抱きしめた。





私いつのまにか
寝てたんだ、って
それで気付いた。



夢に男が出てくると
なんだかその人を
前より好きになってしまう。
私だけかな?





Pipipipipi…


アラーム音で
完全に目が覚めた。


デートにそなえて
しばらく友貴に会うのは
自粛しよう。

大川さんに
見られたら困るし。

それに
友貴に会うような
テンションじゃないし。




あぁ
メイク落とさないで寝てた。
早くシャワー浴びなきゃ。



起き上がって
下に降りると
両親が朝食を食べていた。

「おはよう」

私が一応、あいさつすると
父は私をチラッと見て

「もういい年なんだから
 早く起きて母さんの手伝いでも
 したらどうなんだ」

と言った。



父親って
いつからこうなるんだろう。

ため息が出る。



「まぁまぁ
 彩も仕事で疲れてるんだから。
 シャワー浴びてらっしゃい」

「なにが仕事だ。
 女がそこまで働くことはない」





父はいつもこうだ。
某銀行の支店長をしてるせいか
ものすごく固い。
古くさい価値観の持ち主。



無視して
バスルームに向かった。




シャワーを
頭からかけると
なんだかモヤモヤしたものが
流れていくような気がする。




――母は父といて
   幸せなんだろうか。

結婚して専業主婦になって
父はいつも帰りが遅くて。
休日だってゴルフでいなくて
そんな中で
私を産んで、育てて。

好きなこともできず
遊ぶこともなく
自分の意見なんて
誰にも聞いてもらえない

そんな人生で
よかったんだろうか。



女の幸せって
何なんだろう。


母を見てると
結婚して、家庭に入ることが
幸せだとは思えない。

だけど
一生ひとりで生きてく、なんて
覚悟きめることもできない。
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