等心大〜tou・sin・dai〜
母はきっと
父が初めての男だったんだろう。
予想だけど。

そして、最期の男。




私が最期の男に選ぶのは
誰なんだろう。

友貴?
大川さん?
それとも他の誰か――?




「今の時代だから
 結婚が全てじゃないと思うわ。
 お父さんはああ言うけど
 放っておきなさい」

母はそう言って
飲み終わったコーヒーカップを
下げながら

「料理も洗濯もしたことない娘、
 恥ずかしくてまだ
 嫁になんかやれないしね」

と笑った。





母が忙しく
家事をしているので
私はなんだかヒマになって
部屋に戻った。



久しぶりにパソコンを開く。
普段は立ち上げるのが面倒で
なかなか開かないのだけど。
たいがいの用事は
ケータイで済むしね。

何週間かぶりに
メールチェック。



すると
大学時代の同級生、春奈から
メールがきていた。

春奈は卒業後
ドイツに留学していたのだ。



『久しぶり!元気にしてる?
 今度、一時帰国するから
 よかったら会えない?
 いろいろ話したいし^^;』


メールの日付は先週だった。
もう帰国したのかな。
急いで返信しておく。


『私も会いたいよ〜
 帰国したらぜひ電話してね。
 ドイツでのこと聞きたいなぁ』





――ドイツか。

私も大学生のとき
留学したいってキモチもあった。

なぜしなかったか、というと
当時好きな人がいて
遠距離が耐えられないと
思ったから。

結局その人とは
進展しなかった。



留学してたら
今、どうしていただろう。
学生時代は
恋愛至上主義だった。
今になってちょっと後悔…

もっとあの頃
勉強して
自分磨きしていたらよかったかも。

まぁきっと
今の私が、あの頃の私に
そう助言したとしても
聞く耳持たないだろうけど。


恋まっしぐらな人間には
どんな言葉も届きはしないのだ。
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