等心大〜tou・sin・dai〜
店内に入ると
すでに大川さんがいた。


お互いすぐに気が付き、
大川さんは席を立った。



「こんばんは」

「西村さん、
 あれから電話くれないから
 きてくれるか不安でしたよ」

「あはは
 相変わらずウマイですね」

「本心ですよ。
 じゃあ出ましょうか」



どこに行くんだろう、と思いつつ
大川さんに背を押されて
スタバを出た。



「さぁ今日は何にしましょうか」

「大川さんにおまかせします」

「ははっ
 西村さんはひかえめだなぁ」




どうせ大川さんは
今日のプランを考えてきたに
違いないのだ。


きっと私が
行きたいところを言えば
すぐに笑顔で応えてくれるだろう。


でもあえて
今日は大川さんに
まかせることにした。

どっちみち
何かしたい気分じゃなかったし。



「ディズニーランドに
 行きましょうか」

大川さんが微笑みながら
言った。

「私しばらく行ってなかったな。
 行きましょう行きましょう」

すると大川さんは
ちょっと言いにくそうに

「今日は僕の車でも
 いいですか?」

と言った。


私はおどけたような顔を
してみせた。

「ええ。
 私、変なことしないから
 大丈夫ですよ」




大川さんはキョトンとして
そのあと笑い出した。



「それは僕のセリフですよ。
 西村さんって面白いなぁ」



少し歩くと
コインパーキングがあった。
その中に入ると
白のセルシオが停まっていた。


「さぁ乗ってください。
 早く行きましょう」

「早く行かないと
 終わっちゃいますもんね」

「そうそう」



クスクス笑いながら
車に乗り込み出発した。



「あのー」

私は寿司屋に行った時から
思っていたことを
口にした。
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