等心大〜tou・sin・dai〜
少数派でいたい、って
ずっと思ってた。


たとえみんなが敵になっても
信念を貫くような
そんな生き方がしたいって。

ありふれた人生なんて
くだらない、と思ってた。


でも結局のところ
私は今ありふれた場所で
ありふれた人生を送っている。





また
春奈の顔が思い浮かんだ。


もう春奈のようには
生きられないだろう。

いまさら留学して
演奏家を目指すなんてムリ。
それに気力がない。



だけどまだ何か
可能性があるんじゃないかって
自分に期待してる。





「…どうかした?」

大川さんが心配そうに
黙りこんだ私の顔を見る。


「大川さんはきっと
 マイノリティな生き方だよね」

「えぇ?全然っ!」

大川さんは
本気な感じで否定した。


「僕なんて生まれた時から
 人生決められてたから。
 会社の後継ぎ、
 大川家の後継ぎ」

「でも
 ありふれた人生ではないよ?」



大川さんは
ちょっと考えるような顔をした。


「でも」


もう一度
かるく息を吸ってこう言った。



「でも、自分のこと
 自分で決めたこと
 一度もないよ」


大川さんの横顔が
さびしそうに見えた。



誰にでも
影はあるのだ。


誰でも、
ほかの誰かが羨ましい。
無い物ねだりだったとしても。





「もう着くよ」

気付くと
ディズニーランドの駐車場に
入るところだった。


土曜の夜だから
すごい車の数。




「入口から遠くなっちゃったね」

「もうこんな時間だから
 仕方ないよ」

「でもパレードは見れるね」



車をおりると
雨がポツポツ降りだした。


「ふってきちゃったな」

大川さんが空を見上げて
残念そうに言う。


「でも屋内アトラクションとか
 いっぱいあるし」


私がそう言うと
大川さんはニコッと笑った。
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