等心大〜tou・sin・dai〜
「アヤシイ奴だと思わない?」

まさかこんなこと
聞かれるとは思わなかったので
アセッてしまった。

「アヤシイって…えーと、
 どうして?」




大川さんは私の隣に腰かけた。
そして私の顔を見ながら
冗談めかしてこう言った。


「初めて会った日に食事に誘って
 初めてのデートで
 部屋に連れ込んだ」


目を見合わせて笑った。


「それなら私も同じじゃない?
 誘いにホイホイついてくる、
 バカな女」



大川さんは大きな声で笑った。

「ホイホイついてきても
 彩さんはマナーがある」



マナー?
よく意味はわからないけど
悪いことじゃなさそうだ。



「私がフツーじゃないかも
 とか思わなかったの?」

「変な趣味でもあるとか?」


私はちょっと考えて
首を振った。



「フツーよ、フツー。
 イヤんなっちゃうくらいにね」

「それはよかった」



――ちっともよくない。

でもあなたと結婚したら
私はフツーの女から
格上げになるかもしれない。




「でも、ホントは
 彼氏がいるんでしょ」

「えっ…」


心臓が止まるかと思うくらい
ビックリした。


ケータイ見られた?
いや、肌身離さずもってたから
そんなはずはない。



「もしくは、最近まで彼氏がいた
 現在進行形か過去形か」

大川さんは
なんだか余裕な表情だ。


「どうしてそう思うの?」

「彼氏のいる子はすぐわかるさ。
 色気がちがう」


なんて答えたらいいんだろう。
見透かされてる気がする。


「でも僕はそんなこと
 問題じゃない」

私の目をしっかり見て
大川さんが言う。


「自信があるのね」

私の言葉に大川さんはまた笑って



「自信じゃない、確信だよ」

と言った。




私こういうの、好きかも。
強引に恋におちていくことに
女の子は憧れるものだ。


気がつくと
大川さんが私の肩を抱きよせて
唇が重なった。
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