等心大〜tou・sin・dai〜
春奈みたいに
25で夢だけを追い続けられる子、
いないわよ。


悪態じゃなくて
スナオにそう思う。



ビールがきて
カンパイをした。


「春奈、彼氏いないの?」

「うーん…いたりいなかったり」

「今はいないの?」

「ビミョーかな。
 彩はどーなのよ」

「私も…ビミョーかな」

「なんだそれ」



春奈は笑った。
つられて私も笑い

私は春奈に聞いてみたいと
思ってたことを口にした。


「春奈は結婚とか考えないの?」


春奈は目を見開いて
何言ってんの、と言いたそうな
顔をした。



「彩はアセッちゃってるわけ?」



アセッちゃってる?
そうかもしれない。


「だってもう25じゃん。
 売れ残ったらイヤだなーって」


箸でツクネをつつきながら
目を合わせずそう言うと
春奈はため息を大きくついた。



「若い女がいい、なんて
 幻想よ、幻想」


私は顔を上げた。

「でもさ、
 結婚にはリミットないけど
 出産にはリミットあるのよ」



自分で言って
今、気がついた。

私は結婚そのものよりも
出産のリミットにアセッてる。
多分。



「でも10年後でも
 子供は産めるじゃない」

春奈は
なんだそんなこと、って
いう感じだ。


「相手がいればね」

「彩なら大丈夫よ」

「大丈夫じゃなかったら?」



春奈は呆れ顔になった。



「子供をもたない人生を
 楽しめばいいじゃない」


私は春奈を見つめた。


「子供を産んだら
 子供をもたない人生を
 もう味わえないのよ?
 また違う幸せもあるはずよ。
 きっとね」




子供をもたない人生。
それもいい、と思えるほど
私は強く生きられるだろうか。



「私も春奈みたいになれるかな」

「何よそれ。
 私はむしろ彩になりたいわよ」


そう言って
二人で大笑いした。
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